ズムウォルト級駆逐艦

Zumwalt class destroyer

ＤＤ（Ｘ）やＤＤＧ－１０００とも呼称されるズムウォルト級駆逐艦は、ステルス性と対地攻撃力に主眼を置いたアメリカ海軍が開発中の新型駆逐艦である。
艦の名称は最年少でアメリカ海軍作戦部長を勤めたエルモ・Ｒ・ズムウォルトＪｒ提督に因んでいる。
駆逐艦に分類されてはいるもののズムウォルト級の排水量は１４，５６４トンに達するとみられ、現在アメリカ海軍で使用されているアーレイバーク級駆逐艦はもとよりタイコンデロガ級巡洋艦をも上回り、かつての重巡洋艦のそれに匹敵する規模になっている。

ステルス性

まず目を引くのはその特異な形状だが、これはステルス性を意識した結果に他ならない。ズムウォルト級駆逐艦の船体はタンブルホームと呼ばれるもので、喫水線付近から上にいくほどすぼまっていく形状をしている。この形状では水平方向から来たレーダー波はすべて空に向って反射されるため、ＲＣＳ（Ｒａｄａｒ　Ｃｒｏｓｓ－Ｓｅｃｔｉｏｎ；レーダー反射面積）が従来の艦船に比べ飛躍的に減少し、ステルス性を高めることに繋がっている。
また従来の回転式レーダーやマスト等ＲＣＳの増大をもたらす装備も廃止される。

先進砲システム　－　Advanced Gun System(AGS)

AGS先進砲システムズムウォルト級は主砲として１５５ｍｍ単装砲を前甲板に２基搭載する。
この艦載砲はＡｄｖａｎｃｅｄ　Ｇｕｎ　Ｓｙｓｔｅｍ（ＡＧＳ）と呼ばれるもので、新型の６２口径１５５ｍｍ砲と対地攻撃用の長距離誘導砲弾（ＬＲＬＡＰ；Ｌｏｎｇ　Ｒａｎｇｅ　Ｌａｎｄ　Ａｔｔａｃｋ　Ｐｒｏｊｅｃｔｉｌｅ）から構成されている。

この砲弾はロケットブーストにより射程を延伸しており、約１８０ｋｍに達する射程距離と、慣性航法装置およびＧＰＳにより誘導され、半数必中界（ＣＥＰ；Ｃｉｒｃｕｌａｒ　Ｅｒｒｏｒ　ｏｆ　Ｐｒｏｂａｂｉｌｉｔｙ）５０ｍという正確さを備えている。

弾頭は１１ｋｇの高性能炸薬（ＨＥ）で、発射速度は１分あたり１０発である。
ＡＧＳの製造元であるレイセオン社は、ズムウォルト級に搭載されるＡＧＳ２基は陸軍や海兵隊等が装備する従来の１５５ｍｍ榴弾砲１２門に匹敵し、現在海軍が装備する砲の３倍のエリアをカバーできるとしている。

舷側垂直発射システム　－　Peripheral Vertical Launch System(PVLS)

ズムウォルト級には舷側垂直発射システム（ＰＶＬＳ）と呼ばれる新型ＶＬＳ、Ｍｋ－５１が搭載される。
舷側垂直発射システムは戦闘や事故等による弾薬庫の爆発の際、船体の中央部の安全性を高めようという試みである。

タイコンデロガ級巡洋艦やアーレイバーク級駆逐艦が搭載していた従来のＭｋ－４１ＶＬＳは艦の中央部にまとめて配置されていたのに対し、ズムウォルト級のＭｋ－５１ＶＬＳは薄い外殻とより分厚い内殻の間に散りばめる形で装備され、被弾の際に爆圧を外側に逃がす構造になっている。

Ｍｋ－５１は１基４セルで構成され、ＥＳＳＭ、スタンダード、トマホーク、アスロック等各種ミサイルを発射することができる。
ズムウォルト級にはこのＭｋ－５１が２０基８０セルが搭載される。

デュアル・バンド・レーダー

レーダーにはＳバンドとＸバンドのふたつの周波数を艦橋周辺に装備されたコンフォーマル・アレイ・アンテナによって送受信を行うデュアル・バンド・レーダー・システムが採用される。

このデュアル・バンド・レーダーは、ロッキード・マーチン社が開発したＶｏｌｕｍｅ　Ｓｅａｒｃｈ　Ｒａｄａｒ（ＶＳＲ）と呼ばれるＳバンド広域捜索レーダーと、Ｘバンドを用いるレイセオン社のＡＮ／ＳＰＹ－３多機能レーダーから成るシステムである

ＶＳＲはその名のとおり高高度・広範囲の捜索に用いられ、アクティブ・フェイズド・アレイ・タイプであるＡＮ／ＳＰＹ－３は対艦ミサイルのような低高度を飛来する目標の捕捉を行う他、ＥＳＳＭやスタンダードミサイルの誘導にも使用される。

同型艦

当初は３２隻の建造が計画されていたが、最新かつ実験的な技術が多数盛り込まれたことでコストの増大を引き起こし、３２隻→１２隻→７隻と建造計画は縮小された。
しかし財政状況は逼迫しており、さらに建造数が減らされ最終的に２隻のみにとどまる模様だ。直接的な原因はその膨大なコストによるものだが、ステルス性を備えているとはいえ高価な駆逐艦をわざわざ敵国沿岸まで接近させる運用法にも疑問が呈されたようだ。

なお２番艦ＤＤＧ－１００１にはイラク戦争にて名誉勲章（Ｍｅｄａｌ　Ｏｆ　Ｈｏｎｏｒ）を受章したマイケル・モンスーア（Ｍｉｃｈａｅｌ　Ｍｏｎｓｏｏｒ）ネイビーシールズ隊員の名が与えられた。

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ステルス性を追求したおかげで味もへったくれもない形状になってしまいました。ステルスが世の中の趨勢とは言え、これからはズムウォルトみたいなつるぺったんな船ばかりになるのかと思うと少し残念な気がしないでもないです。
模型が発売されたらパーツ数もかなり少なくなりそう（笑）。