メルカバ主力戦車
Merkava main battle tank
- メルカバ
- 古代オリエント世界で使用された戦車、チャリオットを意味するヘブライ語。
イスラエル国防軍が装備するメルカバは他国の主力戦車とは一線を画す独特な設計思想で知られる主力戦車である。
最大の特徴はなんといっても乗員の生存性を最優先に考えられた設計にある。
大抵の戦車はエンジンを車体後方に配置しているが、メルカバは車体前方に配置 している。これは被弾の際にエンジンまでをも乗員を守る盾として使用するという発想 によるもので、たとえ被弾により戦車が破壊されてたとしても、 乗員への被害を最小限に抑えられるよう配慮されている。
そして車体後方にには弾薬庫とハッチが設け られているが、このハッチは万一車体が破壊された場合の乗員の脱出を容易にしている。 また弾薬庫の主砲弾を降ろすことにより空くスペースで、兵員6名やその他物資を 運ぶ、いわゆる"戦場タクシー"のような使い方もできる。 もっともそういった使われ方は稀で、大抵は弾薬庫として使用されるようだ。
メルカバは1977年に実戦配備されてから現在に至るまで改良され続けており時系列順に
Mk1からMk4までが存在するが、改良点には必ず防御力の強化が盛り込まれていた。
このことは単純にイスラエルが乗員の生命を重視する人道的な国を意味しているわけではない。
もし犠牲者が増え始めた場合、すぐに実戦参加できるような訓練された戦車兵を無尽蔵に
供給するようなことが、小国イスラエルにはできないのだ。
このようにメルカバは、回りを敵性国家に囲まれ人的資源に乏しいイスラエルの国情がよく反映
された戦車といえる。
ちなみにイスラエルは国民皆兵、つまり男女ともに兵役の義務がある国である。
現在メルカバは専らパレスチナゲリラの鎮圧に用いられており、 それ故、当然のことながらパレスチナ人にしてみればは目の敵 とも言える存在だろう。 メルカバの7.62mm機銃や迫撃砲はすべて対人用というから恐ろしい。
右図はパレスチナの人々から投石を受けるメルカバMk3。このような 光景はパレスチナでは日常茶飯事である。
メルカバMk4
メルカバMk4は2004年から配備が始まった現時点でのメルカバ最新バージョンだ。
エンジンを1200hpから1500hpへと強化し電子機器
も最新のものを装備、装甲もさらに強固なものとなった。
市街戦に最適化されており、トップアタック対策として従来の前面だけでなく砲塔上部にも
装甲が追加された。
照準装置にも先進的な物が採用されており、行進間射撃能力も付与されている。
さらに主砲からは通常弾の他に、イスラエル・エアクラフト・インダストリーが開発したLAHAT
レーザー誘導式ミサイルを
発射することができ、対戦車戦闘のみならず対ヘリコプター戦闘にもある程度の対応が可能となる。
メルカバMk4は年に50〜70両のペースで生産されており、最終的には400両程度になると
見込まれている。
イスラエル-レバノン紛争
2006年6月12日から8月14日までにわたるイスラエルとレバノン(主に民兵組織ヒズボラ)
との紛争では、メルカバも含む多数のイスラエル戦車が対戦車ミサイルによって損傷したり破壊されたりした。
この対戦車ミサイルは主に
ロシア製のメチスMで、ヒズボラ兵士の手により至近距離から放たれたとされている。
イスラエル戦車の損害は、対戦車ミサイルの他にも即席爆発装置(IED)によるものもあった。
破壊された戦車がメルカバMk3だったのかMk4だったのか、はたまたマガフのような
他の戦車だったのかは定かではないが、
イスラエル外務省によると
少なくともメルカバ2両が被弾し、それに搭乗していた兵士4名が犠牲になったようだ。
また
こちら
の記述には、メルカバMk4がAT−14コルネット対戦車ミサイル2発の直撃を受けたものの乗員4名は無傷で脱出したとある。
被弾状況や被弾したメルカバのバージョンについて
情報が少ないので何とも言えないが、Mk4とその他のメルカバでは、被弾時の生存率が違ってくるものと
予想される。
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Specifications(Mk3) | |
全備重量 | 63t |
全長 | 7.6m |
全幅 | 3.72m |
全高 | 2.66m |
最高速度 | 60km/h(路上)、55km(不整地) |
航続距離 | 500km(路上) |
超堤高 | 1m |
超壕幅 | 3.5m |
エンジン | 空冷4ストロークディーゼル、1,200hp |
武装 |
120mm滑腔砲×1(50発) 7.62mm機関銃×3 60mm迫撃砲×1 |
装甲 | モジュラー式スペースドアーマー |
乗員 | 4名(車長、砲手、装填手、操縦手) |