潜特型潜水艦
I-400 class submarine
潜特型潜水艦は、晴嵐特殊攻撃機を3機搭載し、パナマ運河攻撃を目的として作られた潜水空母とも言われる
大型潜水艦である。終戦までに3隻が完成し、伊400と伊401がウルシー泊地攻撃の任務に就いたが、任務
途中で終戦となり日本本土へ引き返す途中で米海軍に接収された。
その後米軍の手により調査・検証が行われたが、水密格納筒の構造が後のミサイル搭載
潜水艦を作る際に参考になったとされている。
潜水艦の隠密性の高さと航空機という長距離攻撃が可能な兵器の組み合わせというコンセプトは、まさにSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)
を搭載した戦略ミサイル潜水艦の先駆けと言えるものであった。
この世界でも類を見ない航空機搭載潜水艦に当時のソ連も興味を示し、米軍に対し引き渡しを要求
した。しかし技術がソ連に渡ることを恐れた米軍はその要求を拒み、ハワイ近海で海没処分とした。
2005年3月17日には、その海没処分にされた伊401が、航行装置の訓練中だった
ハワイ大学の研究員により偶然発見され話題になった。
さらにその後
2013年の8月には、同じく伊400が発見され、話題になった。
なお、3番艦の伊402は長崎県五島列島沖で他の2艦と同様標的艦として処分されたが、沈没位置は明らかになっていない。
潜特型潜水艦は航空機を3機搭載するため非常に大きく、1960年代に核ミサイルを搭載した
原子力潜水艦が建造されるまで世界最大の潜水艦だった。
また、日本から見てほぼ地球の反対側に位置するパナマ運河が当初の攻撃目標だっただけに、
無補給で地球を1周半できるほど長大な航続距離(14ノットで37,500海里)を持っていた。
しかし一方で潜水航行時のノイズが大きかったため、潜水艦最大の武器とも言える隠密性にはやや難が
あったと言える。
ただしこれは当時の日本の潜水艦すべてに当てはまることでもある。
伊400の航空機格納用ハンガー→
晴嵐は分解して格納され、暗闇での作業を容易にするため
パーツの結合箇所を蛍光塗料でコーティングするなどの工夫が
なされていた。
4名の熟練作業員の手により、6分で組み立てることができたという。
3機すべてを組み立てて武装を施しカタパルトで射出するのに15分を要した。
パナマおよびウルシー爆撃計画では晴嵐パイロットのみを回収し、機体は
海中に投棄する予定だった。回収作業中に反撃を受けるのを避けるためだと思われる。
特殊攻撃機「晴嵐」
M6A1晴嵐は潜特型潜水艦に搭載することを目的に作られた攻撃機である。
アツタ三二型水冷倒立V型12気筒1340馬力エンジンを搭載。最高速度は475km/h。
800kg爆弾または航空魚雷1本を搭載する。
潜特型潜水艦には、この晴嵐攻撃機が3機、水密格納筒に分解状態で
搭載されていた。
写真の晴嵐は
スミソニアン博物館に展示されているものである。
派生機としてフロートの代わりに引き込み足を装備した陸上型の「南山」(晴嵐改)が
ある。また、晴嵐と同じアツタ三二型水冷エンジンを搭載した機体に、艦上爆撃機「彗星」
がある。
■関連リンク
- 伊号第400潜水艦 カラー映像
- 戦後アメリカ軍に接収されたイ−400の映像です。
- 1/350 艦船シリーズ 日本海軍特型潜水艦 伊-400
- タミヤの1/350スケール伊‐400の組み立てキットです。
Specifications | ||
排水量 | 3,530t(水上)、6,560t(水中) | |
全長 | 122m | |
全幅 | 12m | |
最高速度 | 18.75kt(水上)、6.5kt(水中) | |
安全潜行深度 | 約100m | |
航続距離 | 37,500海里(14kt) | |
動力装置 | ディーゼル機関4基7,700馬力(水上)、モーター2,400馬力(水中) | |
武装 |
530mm魚雷発射管8門 14cm単装砲1門 25mm三連装機銃3基 25mm単装機銃1基 |
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艦載機 | 晴嵐特殊攻撃機3機 | |
同型艦 | 伊401、伊402 |