T28超重戦車
T28 Super Heavy Tank / T95 Gun Motor Carriage
T28超重戦車は第二次世界大戦中アメリカ陸軍で試作された最も強力な装甲戦闘車両である。
T28は「戦車」の名称が付いているものの他の戦車との戦闘を想定しておらず、ドイツが建造・喧伝した防衛線、「ジークフリート線」
などの要塞攻略に使用される予定だった。しかし試作車両が完成した時点で既に戦争は終結しており、実戦参加の機会はなかった。
米軍の分類上重戦車となっているが、
実質的には自走砲に近く、実際「T95自走砲」の名称で呼ばれた時期もあった。
T28の設計と製造はパッカー社(Pacific Car and Foundry)によって行われた。
基本的な駆動メカニズムはT23中戦車のものが流用されている。
当初の計画では試作車両5両、最終的に25両が製造される予定だった。
まず試作車両が2両製造され、1947年までアバディーン試験場などで評価試験が行われた。
しかしこの2両の試作車両を製造したのみで計画は終了している。計画がT29、T30重戦車に
取って代わられたためである。
T29はT28と同じ砲を旋回砲塔に搭載したもので、T30はより強力な155mm砲とより強力なエンジンを
搭載した重戦車だった。
T−28は全備重量が86トンにも達し、この大重量を支えるために通常2本の履帯を使用するところ、倍の4本の履帯を 用いた。 外側の履帯は輸送を容易にするため取り外すことが可能で、取り外した2本の履帯は一つに連結したのち、戦車 などで牽引することができた。
この桁外れに大きい重量と非力なエンジン出力のため、T−28は当時のポンツーン(舟橋)を渡ることができず、 不正地走破能力も極めて制限されていた。このため戦場での運用にはそぐわず、量産には不適合と見なされた。
T28は一般的な砲塔を持たず、代わりにケースメイト式を採用したため、砲の射界が限定されていた。
主砲は強力な105mm砲T5E1で、初速は1,130m/sで、射程は19kmだった。
105mm砲は球状の砲基部と連結されるかたちで車体前面にとりつけられた。
射界は左右にそれぞれ約10°、附仰角が+19.5°、−5°だった。
副武装としてはブローニングM2重機関銃がコマンダーズハッチの上に装備されていた。
装甲は他の戦車と比較して非常に厚く、正面装甲は305mmに達し、これはドイツの重戦車が装備する
88mm砲に対して十分な防御力を持つと見なされており、単純な厚みで言えば16インチ砲に耐え得る
アイオワ級戦艦の舷側装甲(307mm)にも匹敵する。
車体前面下部は130mm、車体側面は64mmの装甲で覆われ、サスペンション・システムと車体下部も100mmの装甲
スカートで防御された。
一方この超重量を担うには500馬力のフォード製GAF8気筒ガソリンエンジンでは明らかにパワー不足であり、最高速度は 13km/hと遅く、不正地走破能力も非常に限定的だった。
T28は現在1両が現存しており、ケンタッキー州フォートノックスのパットンミュージアムにて展示されている。
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■関連動画
- T-28 Superheavy Tank
- YouTubeに投稿された動画です。
Comparison with other tanks | |
重量 | 86.2t |
全長 | 11.1m |
全幅 | 4.39m |
全高 | 2.84m |
最高速度 | 13km/h |
エンジン | フォードGAF V−8(500hp) |
武装 | 105mm砲×1(装弾数62) M2重機関銃×1 |
装甲 |
305mm(車体前面) 130mm(前面下部) 64mm(側面) 100mm(スカート) |
乗員 | 4名 |
生産数 | 2両 |
二重に装備された履帯に、低く扁平な車体が厳つさを醸し出しており、大変魅力的な フォルムに思えます。SFアニメにでも登場しそうです。