Ａ−１０Ａ サンダーボルトII攻撃機

A-10A Thunderbolt II

A-10AサンダーボルトIIは、地上の敵部隊を攻撃し味方地上部隊の戦闘を援助する近接航空支援専用に開発された アメリカ空軍の地上攻撃機である。 近接航空支援（ＣＡＳ＝Ｃｌｏｓｅ　Ａｉｒ　Ｓｕｐｐｏｒｔ）という任務の性格上対空砲火飛び交う最前線が主な活動場所になるため、 徹底した生存性の追求が成されている。

燃料タンクは防弾タンクとされていることをはじめ、風防の前面は防弾ガラス、 コックピットはバスタブ型のチタン合金製の装甲で覆われている。 胴体後方上面に設置されたエンジンは主翼と尾翼の陰になることでエンジンが直接 被弾する可能性を少なくしている。主脚は収納状態でもタイヤの半分が露出している ため、万一の不時着時でも被害を最小限に抑えることができる。

操縦系統は2重の油圧システムに人力操舵機構を加えた3重の系統を持ち、それぞれの舵は すべて左右独立して駆動されるためたとえ被弾で片方が損傷しても残る片方で操縦 することが可能になっている。

強力な武装も大きな特徴で、機首に装備されたＧＡＵ−８アヴェンジャー３０ｍｍガトリング砲は 七砲身で毎分３，９００発の発射速度を持ち、あらゆる戦車を1キロ彼方から破壊することができると されている。

徹甲弾と焼夷榴弾を４：１の割合で搭載しているが、徹甲弾の弾芯には比重の大きい劣化ウランが 使用されているため運動エネルギーによる威力が大きく、また劣化ウラン自身の、粉末状になると自然発火するという性質 により焼夷弾としても機能する。

ＧＡＵ−８は長さ６．４０ｍ、重量が２８１ｋｇ、弾薬込みで１．８３ｔにもなる巨大な 機関砲で、Ａ−１０の前輪は この砲身の干渉を避けるため胴体右側にオフセットして取り付けられている。

ちなみにＧＡＵ−８はＡ−１０Ａ攻撃機の固定武装の他にも、オランダが開発した 艦船用の近接防御システム（ＣＩＷＳ） "ゴールキーパー" の兵装としても 使用されている。
ゴールキーパーは現在広く普及しているファランクスＣＩＷＳに比べて、 射程距離やストッピングパワーで勝るが、値段も倍になっている。 ゴールキーパーを搭載している艦には、オランダのカレル・ドールマン級フリゲート艦や イギリスのインヴィンシブル級航空母艦、韓国の 独島級揚陸艦 などがある。

Ａ−１０は低速域におけるきわめて高い機動性を持っているが、反面最大速度は７５４ｋｍとジェット機としてはかなり遅い。 もともとＡ−１０に高速性能は要求されなかったので仕方がないのだが、近年発達のめざましい対空ミサイルに対する 脆弱性を危惧する声もあった。

事実湾岸戦争では６機のＡ−１０Ａが対空ミサイルによって失なわれている。
しかし一方でＡ−１０Ａは８，１００ソーティを飛び、９０％のＡＧＭ−６５マーヴェリック対地 ミサイルを発射し、９８７両の戦車１，３５５両の戦闘車両、９２６基の砲床を破壊し、９５．７％の稼働率を達成する等 縦横無尽の活躍を見せた。

さらに対空火器（ＡＡＡ＝Ａｎｔｉ−Ａｉｒｃｒａｆｔ　Ａｒｔｉｌｌｅｒｙ）に対する耐性は高く、 上の写真のように被弾した機体も多かったが対空火器による損失は１機もなかった。(写真はイラク戦争時のもの)

こうしてもともと早期の退役が予定されていたＡ−１０Ａだったが、湾岸戦争でその有用性を示したことにより 運用寿命の延長が決定され、２０２８年Ｆ−３５ＡライトニングＩＩに代替されるまで第一線に留まる ことになっている。

関連動画

A-10 Warthog, Thunderbolt II

ＹｏｕＴｕｂｅに投稿されたサンダーボルト�Uのビデオクリップです。

A-10 Thunderbolt

同じくＹｏｕＴｕｂｅからです。ＧＡＵ−８の給弾作業の模様が少し映っています。
ＧＡＵ−８は「ガウ・エイト」と発音するようです。