F−15SE サイレント・イーグル
F-15SE Silent Eagle prototype strike fighter
F−15SE(サイレント・イーグル)はボーイング社が2009年3月17日に公開した計画中の戦闘爆撃機である。 開発の主眼は、ステルス性、兵装の機内搭載能力、統合されたデジタルアヴィオニクスという第5世代戦闘機の特徴である 能力をF−15に付与し、国際マーケットを狙うというものだ。
第4世代戦闘機を改良することにより 空対空レーダーに対するシグネチャー、つまりは 機体正面のRCS(Radar Cross−Section=レーダー反射面積) を減らすことがF−15SEの最大目標で、ボーイングはF−15戦闘機を運用する5ヶ国に対して合計 190機の発注を試算している。
RCSを減少させるために、レーダー波を反射しやすい機体のエッジの部分に RAM(Radar Absorbed Material=レーダー吸収素材) をコーティングするとともに、F−15Eでは直立していた垂直尾翼を15°外側 に傾けることで、横方面へのレーダー反射の減少も狙っている。
このV字型の垂直尾翼はRCS減少の他にも、空気力特性が改善され揚力が向上するといった 付随的な効果もあるようだ。
そしてF−15Eではコンフォーマル燃料タンクだった箇所の一部をウェポンベイとし、そこに兵器を内蔵することで全方位の RCSを減少させ、F−15SEにクリーンな状態で作戦行動を行えるようにしている。
これらの改良の結果、正面のRCSに限って言えば、F−15SEのステルス性は 輸出市場で競合するであろう第5世代戦闘機、すなわち F−35ライトニングUや 米政府の許可を得た F−22ラプターの輸出版に匹敵するとボーイングは主張している。
ただしF−15SEが得たステルス性はあくまで正面からに限った話で、地上に設置された対空レーダーに対しては 意味を成さないことはボーイングも認めており、この点はSAM(Surface to Air Missile=地対空ミサイル)を 装備した相手を目標とする攻撃的なミッションでは不利となる。
またF−22ラプターに施されたような サーマル・シグネチャーを減少させることもボーイングの計画には含まれていないため、熱探知ミサイルに対する生存性は 非・ステルス機と変わらない。
しかしF−15SEがターゲットとする国際的な顧客は、強固に防御された地点を叩くような全方位のステルス性が要求される攻撃的なミッションよりも、 迎撃任務のような防御的なミッションに航空機を使用しているとボーイングは発言しており、F−15SEのステルス性で問題ないとの姿勢を示した。
ステルス性が特徴のF−15SEだが、もちろん非・ステルス機としても機能するようにデザインされており、
その場合はF−15Eと同様に13,200kg(29,000lb)の 兵装を機外に搭載することができる。
またウェポンベイを内蔵したコンフォーマル燃料タンクは簡単かつ迅速に取り外すことができるため、F−15SEは
ステルスモードでのミッションを終え基地に帰還後、2時間以内に今度はフル装備の状態で離陸することも可能だ。
F−15SEのもうひとつの重要な特徴は電子戦システムである。
ボーイングはデジタルレーダー警戒装置、ジャミング電波送信機、ECCM装置等を統合させた
BAEシステムズ社の電子戦システム(DEWS=Degital Electronic Warfare Suite)
をF−15SE用に採用した。F−15SEは自身のレーダーやレーダー警戒機を作動させた状態でも、敵のレーダーを
継続的にジャミングすることができるとボーイングは主張している。
飛行試験は2010年の第1四半期に予定されており、海外顧客への受け渡しは契約が成されてから3年後に行えるとしている。
ボーイングはF−15SEをイスラエル、日本、シンガポール、サウジアラビア、そして韓国といういずれも
既にF−15戦闘機を運用している国々に売り込みをかける計画だ。
ボーイングの試算では、F−15SEのコストは機体本体にスペアパーツと訓練費用を加えて1億ドルになるとしている。
なおF−15戦闘機の単独では最も大きな顧客であるアメリカ空軍については、F−15SEの販売ターゲットには
公式的にはなっていない。
しかしながらF−15SEに取りいれられたステルス性やアヴィオニクス、機体構造のアップグレードは現存する
F−15Eのレトロフィットに用いることが可能だとしている。
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関連ページ
- Boeing Unveils New International F-15 Configuration -- the F-15SE
- ボーイング社によるF−15SEのページです。
- F−35ライトニングU
- F−15SEが顧客を得る上で最大のライバルとなりうる第5世代戦闘機です。
- F−22ラプター
- F−35と同じく第5世代戦闘機ですが、先端技術の塊のため国際市場に出回るにはハードルがあります。
Specifications | |
用途 | 試作戦闘爆撃機 |
エンジン | F110-GE-129(推力29,000lbf) |
全長 | n/a |
全幅 | n/a |
全高 | n/a |
最大速度 | n/a |
実用上昇限度 | n/a |
最大離陸重量 | 81,000 lb(うちペイロード29,500lb) |
燃料搭載量 | 34,700lb(コンフォーマルタンク+増槽3本使用) |
戦闘行動半径 | 800海里(対地ミッション) 720海里(対空ミッション) |
レーダー | APG-63(V)3 |
武装 | 20mm機関砲(装弾数502) |
乗員 | 2名 |
コスト | 約1億ドル(スペアパーツ・訓練費用含む) |
初飛行 | 2010年予定 |
航空自衛隊向けのF−15FXに続きボーイングが発表したF−15の最新バージョン。 既存機体の改良で輸出市場にどこまで食い込めるかは未知数ですが、垂直尾翼が 外側に傾けられている所など、 劇場版パトレイバー2 に登場したF−15改「イーグル・プラス」を 彷彿させるルックスがなかなかカッコイイです。