キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦
проект 1144.2 Орлан
Kirov class nuclear powered missile cruiser
ロシアのキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦は、現在就役している中では最大の"巡洋艦"である。 多数の各種ミサイルを装備しており、強力な対艦・対空・対潜能力を有する。キーロフ級は 全部で4隻が建造されたが、ソ連崩壊による軍事費の削減で維持費が捻出できず、現在では アドミラル・ナヒモフとピョートル・ヴェリーキーの2艦のみが稼働状態にある。 アドミラル・ナヒモフは太平洋艦隊に、ピョートル・ヴェリーキーは北洋艦隊に それぞれ所属している。
P700「グラニート」 |
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上: 原潜クルスクから回収されたグラニート 中: 頭部カバーが装着された状態 下: 発射の瞬間 |
キーロフ級巡洋艦最大の特徴は、艦橋直前の発射機に約50度の角度で埋め込まれた20発のP−700"グラニート"対艦ミサイル(NATO コードネームではSS−N−19"Shipwreck")である。
グラニート(花崗岩の意)は全長10m、発射重量6,980kgもある 巨大なミサイルで、約700kmという長大な射程距離を生かしアメリカの航空母艦をその防空圏の外側から攻撃 することを目的として開発された。
発射後は慣性航法装置により誘導され、レゲンダシステムと呼ばれる衛星を用いた自己位置評定システムにより
目標との誤差を修正しつつ、終末段階ではアクティブレーダーを作動させマッハ2.5の速度で目標に突入する。
また最初から複数同時に用いる事を想定して、飛行中にミサイル同士が情報を共有するという機能を備えている。
弾頭は750kgHE(高性能炸薬)または500kt核弾頭である。
キーロフ級の存在意義はこのグラニート対艦ミサイルのプラットフォームというところにあり、多数の防空装備 もグラニートを米空母に向けて発射するまで沈められないようにするためにあると見ることもできる。
このような
長距離対艦ミサイルを多数装備することは有力な正規空母を所有していないソ連海軍が強力な米空母機動艦隊に
対抗するための手段であり、同じようなコンセプトで造られたものに、キーロフ級と同じくグラニート対艦ミサイルを
24発も搭載した
オスカー級原子力潜水艦や、バザーリト対艦ミサイル(SS−N−12サンドボックス)16発を甲板にずらりと並べた
スラヴァ級巡洋艦などがある。
いざ戦闘となればそれらミサイルの一斉発射による飽和ミサイル攻撃を米空母に
仕掛けるわけである。
ちなみに最近ミサイルディフェンス等でマスコミでもよく取り上げられるイージス艦だが、 もともとはソ連が画策したこのような大規模ミサイル攻撃から空母を守るために開発された艦である。
■関連ページ
- Google Mapでキーロフ級巡洋艦を見る
- 4隻すべてのキーロフ級ミサイル巡洋艦をGoogleマップで確認することができます。アドミラル・ラザレフのみ撮影時期の関係上、2箇所 に写っています。
Specifications | |
排水量 | 19,000t(基準) 24,300t(満載) |
全長 | 252m |
全幅 | 28.5m |
最高速度 | 32kt |
航続距離 | 14,000海里 |
動力装置 | 原子炉2基、蒸気タービン4基2軸、 |
武装 |
※データはピョートル・ヴェリーキーのもの
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搭載機 | Ka27対潜ヘリコプター3機 |
乗員 | 726名(士官82)+航空要員18名 |
同型艦 |
キーロフ(→アドミラル・ウシャコフ) フルンゼ(→アドミラル・ラザレフ) カリーニン(→アドミラル・ナヒモフ) ユーリ・アンドロポフ(→ピョートル・ヴェリーキー) クズネツォフ(予算削減により建造中止) |