IAI ラヴィ

IAI Lavi multi-role fighter

IAI ラヴィ
ラヴィ
「若いライオン」を意味するヘブライ語。

ラヴィは80年代にイスラエルとアメリカが共同で開発を進めていた戦闘攻撃機である。 開発にあたっては中東戦争などの戦闘経験を豊富に持つイスラエル空軍現役パイロットの 意見がふんだんに取り入れられた。それらは特にコクッピトにおける計器類の機能的な 配置によく反映されている。
そうして生み出されたラヴィは小型軽量の機体にデルタ翼とカナード翼の組み合わせという ものだった。
小型のためにエンジン推力が自重を上回り、デジタルフライバイワイヤの導入により良好な 運動性を得ることにも成功した。

イスラエルは当初このラヴィを300機生産し 1993年から10年かけてA−4攻撃機やクフィル戦闘機と置き換える計画でいたが、 結局それは実現しなかった。
財政的な問題や様々な経済団体・政治団体からの圧力がかかりプロジェクトが廃止に追いやられたためである。

ラヴィは技術的には成功した機体だったが、それは同時に戦闘機マーケットにおいてアメリカのF−16C/DやF/A−18C/D を駆逐してしまう可能性があることも意味していたのだ。
当然そのような事態はアメリカ航空機メーカーの望むところではなく、プロジェクトの是非をめぐって アメリカ議会でも議論が紛糾したあげくプロジェクトのキャンセルがイスラエルに通告された。
ラヴィの開発コストは1983年で64億米ドルと見積もられておりその内60%をアメリカ が、40%をイスラエルが担うことになっていたが、単独でこれを賄うことは不可能なためイスラエル政府も 1987年8月に計画の破棄を認めた。

計画がキャンセルされた時点でラヴィのプロトタイプは1号機と2号機が完成しており、3〜5号機が 製造途中にあった。このうち3号機は完成にこぎつけ、技術検証機として90年代中ごろまで使用された。

現存しているラヴィは2号機と3号機で、2号機はイスラエル空軍博物館に、3号機はベン・グリオン空港内にある イスラエルエアインダストリーの施設に それぞれ展示されている。

結局アメリカの圧力で日の目を見ることのなかったラヴィだが、その技術は中国に流出し J−10戦闘機 として結実したとも言われている。

* * * *

アメリカのジャイアニズム発動によって潰された不憫な機体です。
ラヴィと同じF−16がベースで日米共同開発の F−2は「レイプされてできた子」などと形容されましたが、 ラヴィの場合は「合意の上だったけど認知されず堕胎させられた子」とでも言うべきでしょうか。

ラファールやタイフーン、グリペンなどデルタ翼+カナードを採用した機体は多くありますが、 個人的にはこのラヴィのスタイルが一番気に入っています。

関連動画

The Israeli air force IAI Lavi
短いですがラヴィの飛行場面、離着陸の模様を見ることができます。
Specifications
用途 多用途戦闘機
エンジン プラット&ホイットニー PW1120(推力 9,344kg)
全長 14.57m
全幅 8.78m
全高 4.78m
重量 7,031kg(乾燥重量)
19,277kg(最大離陸重量)
最大速度 マッハ1.85
航続距離 2,100km
武装 DEFA 30mm機関砲×1
ミサイル、爆弾等7,260kg
乗員 1名
派生機 Lavi B-2(複座の練習機)
初飛行 1986年12月

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