ユーロファイター・タイフーン
Eurofighter Typhoon
ユーロファイター・タイフーンは、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインの4カ国が共同で開発した 戦闘攻撃機である。デルタ翼に小型のカナード翼を組み合わせた形態を採用しており、 ターボファンエンジン2基を搭載し超音速巡航(スーパークルーズ)を可能としていることが 特徴だ。
ユーロファイタープロジェクトはトーネード戦闘攻撃機や近年の JSFのような複数国が参加するものだったが、 こうした国際共同開発には巨額な開発コストを分担し合えるメリットがある反面、各国の歩調を合わせる ことが難しいというデメリットもある。
ユーロファイターのプロジェクトには当初フランスも参加していたが、 フランスが主張した空母での運用能力と、フランス産エンジンM88の採用が認められなかったためフランスは プロジェクトを脱退し独自にラファール戦闘機を開発した経緯がある。
機体特徴
タイフーンが採用したカナード翼+デルタ翼という組み合わせは、空力学的には亜音速域での安定性を欠くものだ。 しかしタイフーンは以下の要求を満たすためにあえてこの形状を採っている。
- 超音速域/亜音速域における高い旋回率の維持
- 俊敏性
- STOL(Short take−off and landing)能力
- 優れた加速性能
- 抵抗の減少
意図的に安定性を欠いた形状にして、それをコンピューター制御のフライ・バイ・ワイヤ 操縦装置でコントロールすることにより優れた敏捷性が発揮できるようにしているのだ。
このデルタ・カナード形態に低い翼面荷重、高い推力重量比、良好な操縦性も相まって、 タイフーンを優れた航空機たらしめている。
タイフーンにはステルス技術も基礎設計に取り入れられている。
F−22ラプターのような本格的なステルス性は有していないものの、
特に正面のレーダークロスセクション(RCS)は
かなり低い値に抑えられているようだ。
機体表面は70%が炭素繊維複合材、15%が軽合金、及びチタン、12%がガラス強化プラスチック、3%がその他の 材質で構成されている。これは言い換えると、金属のタイフーン構成材質に占める割合は僅か15%に過ぎないということを 意味している。
複合材を多用したことで機体の小型軽量化に成功し、レーダー反射面積の減少にもつながっている。
戦闘能力
タイフーンの戦闘能力はしばしばアメリカのF−22ラプター や開発中の F−35ライトニングII、フランスのラファール等と 比較されるが、憶測の域を出ないものが多かった。なかなか信頼に足る情報を得ることは難しいが、 イギリスのDERA(Defence Evaluation and Research Agency)が行った調査では、タイフーンはF−22Aラプターに次ぐ 能力を持つと位置づけられた。
その調査とは実際の戦闘機パイロットがJOUSTシステムと呼ばれる戦闘シミュレーターを使用し、仮想敵機スホイSu−35と 西側諸国の戦闘機が交戦したケースをシミュレートしたものだが、結果は以下の通りになった。
機体 | キルレシオ(VS.Su-35) |
F-22 ラプター | 10.1:1 |
タイフーン | 4.5:1 |
Su-35 フランカー | 1.0:1 |
ラファールC | 1.0:1 |
F-15C イーグル | 0.8:1 |
F/A-18E/F スーパーホーネット | 0.4:1 |
F/A-18C ホーネット | 0.3:1 |
F-16C ファイティングファルコン | 0.3:1 |
これらの数値は、例えばタイフーン1機を撃墜する間に4.5機のSu−35が撃墜されるという事を意味している。
ただしシミュレーションの詳細が公表されていないので、この結果が正確な評価を示しているかどうか証明することはできない。
更にこのシミュレーションが90年代半ばという、まだ各機のレーダークロスセクションや、ECM能力、
レーダーについて限定的な情報しか得られない時期に行われたことを勘案すれば、実際の結果とはかなり異なる可能性がある。
任務別兵装バリエーション
- 対艦ミサイル×4
- 視界外射程空対空ミサイル×4
- 短距離空対空ミサイル×2
- 27mmリヴォルヴァーカノン
- 1,000リッター燃料タンク×3
スーパー・クルーズ
タイフーンはアフターバーナーを使用することなく長時間超音速飛行を維持できる、いわゆるスーパー・クルーズ能力を備えている。
この能力を有するのは現用機では
タイフーンの他にF−22ラプターしか存在しない。
EADS(European Aeronautic Defence and Space Company)によると、アフターバーナー未使用時に、
4発の長射程AAM、2発の短射程AAMを装備した状態でマッハ1.5が可能とのことだ。
ドロップタンクを装備し空対空ミサイルを満載した状態でもマッハ1.3でのスーパークルーズが可能だ。
採用国
タイフーンは開発国である英・独・伊・西で既に運用が開始されている他、オーストリアが18機、サウジアラビアが72機の購入を決定している。
さらにに日本の航空自衛隊でも旧式化したF−4EJ改の更新用機種としてタイフーンの導入が
F−22ラプターや
F−35ライトニングII等と共に検討されている。
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Specifications | |
用途 | 戦闘攻撃機 |
エンジン | ユーロジェットEJ200ターボファンエンジン2基 推力:60kN(ドライ) / 90kN(リヒート使用) |
全長 | 15.96 m |
全幅 | 10.95 m |
全高 | 5.28 m |
翼面積 | 50.0 m2 |
重量 | 11,000 kg(乾燥重量) 23,500 kg(最大離陸重量) |
最大速度 | マッハ2.0 |
航続距離 | 1,390 km |
武装 | マウザーBK-27 27mmリヴォルヴァーカノン×1 各種空対空、空対地ミサイル、誘導爆弾 |
乗員 | 1〜2名 |
生産型 | トランシェ1(迎撃機仕様) トランシェ2(限定的な対地攻撃能力を付与) トランシェ3(攻撃機仕様、開発中) |
初飛行 | 1994年3月27日 |