K.G.Maniax!!
The Cutting Edge of Jazz Saxophone
BEYOND THE WALL |
- ビヨンド・ザ・ウォール - |
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アジア色を前面に出したアルバム
ノンサッチレコード名義になってから初のアルバムです。
万里の長城が写ったジャケットが示す通り、中国、チベットあたりからの影響が強く出た仕上がりになっています。
ヴォイスの導入も今までになかった試みで、独特な世界をつくり出しています。
ファラオ・サンダース、ボビー・ハッチャーソン参加。
ドラムは PURSUANCE 以来の共演となるブライアン・ブレイド。
01.CALLING
何かの宗教儀式を思わせるような荘厳なサウンドです。ケニーとファラオというサックス二管のハーモニーが重厚さをかもし出しています。
02.BEYOND THE WALL
2005年の来日公演のステージでも演奏していた4ビートの高速ナンバー。そのときはなんとサックスの無伴奏(!)ソロを披露していました。
今作でもいつもの小気味よいギャレット節が炸裂しています。カッコイイ!
03.QING WEN
QING WENは请问と表記し、「すみません」という中国語のようです。
メロディーからしてもろに中国を意識した曲です。
Nedelka Echolsのヴォーカルが二胡の音色にも聴こえます。。
04.REALIZATION (MARCHING TOWARDS LIGHT)
実に妖しげな読経音が印象的な曲です。これは
Tibet: The Heart of DharmaというアルバムのNgontog Gyanからサンプリングしたものだそうです。
ケニーのサックスがなんの違和感もなく溶け込んでいるのがおもしろい。もともとケニーのサックスは
スピリチュアルな音色のためこのようなアレンジには「どはまり」するのかもしれません。
05.TSUNAMI SONG
物悲しい二胡(Erhu)の旋律が非常に美しいバラードです。 2004年暮れに起きたインド洋津波被害の犠牲者に捧げた曲でしょうか。この曲でケニーはサックスを吹いていません。なんとピアノを弾いています(!)。そういえばライブでもキーボードを弾いていたことがありました。
日本語のタイトルに対して中国的なメロディーは微妙にミスマッチのような気もしますが、その辺のアバウトさもケニー・ギャレットの魅力(?)ですね^^;
06.KISS TO THE SKIES
題名から決して手の届かない存在に魅入られてしまったジレンマを
想像してしまいました。
この曲もコーラスが効果的に使用されています。 この試みは前々作 「Happy People」にもありましたが、 今作ではさらに本格的に取り入れられとり、独特の世界観を 構築しています。
この曲もコーラスが効果的に使用されています。 この試みは前々作 「Happy People」にもありましたが、 今作ではさらに本格的に取り入れられとり、独特の世界観を 構築しています。
07.NOW
ミディアムファストのラテンのリズムが心地よい曲です。
ボビー・ハッチャーソン、ファラオ・サンダース、マルグリュー・ミラー、そしてケニー・ギャレット全員がソロをとっています。
ケニーのソロは一番最後、8分6秒あたりから始まります。
08.GWOKA
グウォーカとは何ぞやと思い調べてみたところ、グアデロープという中米の島のハンドドラムの一種なんだそうです。この曲でもコーラスが使われていますが、無国籍風な雰囲気がなかなか楽しいです。
09.MAY PEACE BE UPON THEM
美しいメロディーを持つ3拍子の曲ですが、テーマが終わるやいなやテンポルバートになり怒涛のギャレット世界が繰り広げられています。マイルス、コルトレーンが逝って久しいですが、彼らのスピリットを継承し、さらにそれを自分の物に昇華、そして表現し続ける姿に感動すら覚えます。サクソフォンという楽器にここまで剥き出しの激しい感情を込められる奏者を他に知りません。終始鳥肌が立ちまくる凄まじい演奏ですが、個人的には5分48秒の絶叫がピークでしょうか。マルグリュー・ミラーとブライアン・ブレイドのサポートもすばらしい。本作白眉の演奏です。
■Songlist 01.CALLING 02.BEYOND THE WALL 03.QING WEN 04.REALIZATION (MARCHING TOWARDS LIGHT) 05.TSUNAMI SONG 06.KISS TO THE SKIES 07.NOW 08.GWOKA 09.MAY PEACE BE UPON THEM |
■Personel Kenny Garrett(as,pf) Pharaoh Sanders(ts) Bobby Hutcherson(vib) Mulgrew Miller(pf) Robert Hurst,III(ba) Brian Blade(ds) Ruggerio Boccato(per) NedelkaEchols(Vo) Guowei Wang(Erhu) Neil Humphrey(cello) Susan Jolles(harp) |
ソロイストが4人もいるので、前作Standard of Languageほどケニーのソロ は聴けませんが、 今回はそれぞれのソロよりも曲そのものが持つ美しさやエキゾチックさを楽しめます。 爆裂するケニーのソロが聴きたい方には不満があるかもしれませんが、 その分は最後MAY PEACE BE UPON THEMでの熱演でお釣りが返って来ます(笑)。